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2008年11月01日

KPOキリンプラザ大阪-2

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明け方,夜が白み始めると光の塔は静かに眠りに入り,今度は黒御影の外壁が目覚めるのである。各面の周囲だけを本磨きとし,その内側をジェットバーナー仕上げとした壁面は,その黒い色のもつ独特の存在感を内部に秘めつつ 緩やかな口調で語り始めるような気がする。この夜の顔と昼の表情がこの建物の特徴の一つで,人工照明による演出性が見直される契機になった建築物でもある。しかもその気高さは,「雑多な大阪」という悪評を押さえ込んだ都市のシンボルとして,充分 その力を発揮しているのではないだろうか。
私が初めてこの建物を見たときに特に気になったのは,外壁の一部に取付けられたステンレスやアルミの装飾であった。ボーダー状のもの,半球形,板状など言葉で表せない形が 鏡面やヘアラインを織り交ぜて 何らかの規則性で四面の外壁に縦横に縫いこまれている。しかも「光の塔」の形状のモチーフを外壁のモチーフに継承させるように配置されているのだ。これらのボーダーによってその端正な統一感がより明確になり,周囲の下世話な雰囲気からこの建物を際立たせているのである。
この金属の装飾の中でも半球形のものは鏡面仕上げとなっている。球面の特性で 昼間は魚眼レンズのように周囲の風景を映し出し,夜は周囲から垂れ流される光を反射して あたかも自ら輝いているように見せる効果がある。私にはこれらの形状はマヤ文字のように見えたのであるが,メタリックな反射の効果はマヤ文字以上に建築家のメッセージが発信されているような気がするのである。
ポスト・モダニズムにおいては,ロバート・ベンチューリミース・ファン・デル・ローエの言葉である"Less is more" (少ないほど、豊かである)を "Less is bore"(少ないほど、退屈である)と皮肉り,ラスベガスの雑多な商業建築物をもポスト・モダニズムの観点から評価した。その影響からか,古典的な装飾を無理やりとってつけたような建物も排出した。しかし,その後 興ったモダニズムへの回帰の中で,ポスト・モダニズムの影響は 一部 受け継がれ,それがデ・コンストラクティズムの流れになってきているように私には思われる。極端な例としてビルバオグッゲンハイム美術館が挙げられるが,そこまでいかなくても古典的なデザインを現代風に解釈し,よりシンプルなアイテムを直感的に組み合わせる流れが今の建築物にはよく見られる。この「単純な複雑性」というその後のデザイン潮流の予感を 私が初めて「KPOキリンプラザ大阪」を見たときに感じ,何ともいえぬ感動を抱いたことは 今なお 鮮明に記憶している。